カモワン・タロットとマルセイユ・タロット

 カモワン・タロットについては、本来なら公式サイト上の『タロット教室』で詳述するべきところだが、とりあえず現時点での所感を書いておく。カモワン・タロットに対する評価は、タロット愛好家の中でも真っ二つに分かれる。日本では学研から解説書とセットで『秘伝カモワン・タロット』として販売されているが、税別で5800円とかなり高額だ。同社から出ている『正統カバラ・タロット占術』がカードと二冊の解説書のセットで税別3800円であることと比べても高い。そして、カモワン・タロットに対する日本のタロット愛好家の大部分の反応は、「カードは確かに素晴らしい。しかし、解説書の中身が不愉快だ」という物であろう。

 さて、カモワン・タロットととはそもそもどんな物なのか?

 タロットの現在の形が一応整ったのが18世紀頃の一連のマルセイユ・タロットである事はあちこちで述べた。現在、おそらく、市場にもっとも流布しているのが、フォト・アルバムにもデッキ全枚をアップしている、フランスのシモン、一般にグリモー版と呼ばれるマルセイユ・タロットである。その奇術師のカードがこちら。

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 このグリモー版の下敷きになっている古版のマルセイユ・タロットは1760年にニコラ・コンヴェルによって作られた木版画のタロットである。その原版はこれ。

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 グリモー版は、絵柄的には殆どこのコンヴェル版を踏襲している事がわかるが、配色がかなり違っている。

 そしてカモワン・タロットはこのコンヴェル版の印刷所をコンヴェル家から引き継いだカモワン家の末裔、フィリップ・カモワンと映画監督であると同時に古版のタロット・コレクターとしても有名なアレハンドロ・ホドロフスキーによって、1998年に完成した。カモワンとホドロフスキーは、カモワン・タロットは、年を経ると共に(彼ら曰く)改悪され、改変されたマルセイユ・タロットを、秘教的象徴を本来の姿に戻すために発案され、復元された物だと主張している。そしてその奇術師のカードがこれ。

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 一見しただけではグリモー版よりも派手で鮮やかな配色になっただけのように見えるが、なるほど、配色はコンヴェル版に近い物になっている。そして、グリモー版やコンヴェル版よりもちりばめられた象徴は細かく書き加えられている。

 こうした、配色の復元、および秘教的象徴の復元(復元というのはあくまでカモワン、ホドロフスキー両氏の主張である)が全てのカードに施されているほか、カモワン流と称する人物の視線を追ってカードをスプレッドしていくメソッドのために、人物の視線がはっきり描かれている。その他、グリモー版との違いは、通常、マルセイユ系では無番号の「愚者」札は大アルカナの最後に置かれるが、カモワン版では始めに置かれる。小アルカナのコート・カードも通常は、王、女王、騎士、小姓の順に置かれるが、カモワンでは騎士が王の上位に来る。

 さて、カモワン・タロットがタロット愛好家の間で賛否が分かれるのは、カモワン氏が、カモワン・タロットこそ唯一本物のタロットであり、その他のタロットは改悪された贋物であり、自分だけがその奥義を伝える事が出来ると主張していることにある。確かに、多くのマルセイユ・タロットをつぶさに検討し、カモワン・タロットを作り上げたカモワン、ホドロフスキー両氏の功績は讃えられて叱るべきであろうが、他のタロット全てを贋物と決めつけて貶めるような記述が、他のタロットを愛用しているタロッティストをたまらなく不愉快にさせるのであろう。特にやり玉に挙げられているライダー・ウェイトの愛好者にとっては噴飯物であろう。

 つまり、カモワンの主張を受け入れるのなら、他のタロットは全て贋物であるという事になるから使うに値しない事になり、カモワン・タロットのみを占いや瞑想の術式に使う事になる。受け入れない人々は、単なるマルセイユ・タロットの新作としてコレクションに加えるだけか、或いは無視をする事になる。

 ここからは私の私見だが、マルセイユ・タロットがそもそも秘教的な象徴を盛り込んだ秘伝的なタロットであるとは、アカデミックなタロット研究の成果を鑑みれば考えられないと私は考えている。なのでカモワン・タロットに込められている秘教的なシンボルとは復元と言うよりは再創造なのだ。そうした意味で、マルセイユ系のタロットを実占や瞑想に使う人にとっては、カモワン・タロットは魅力的なカードである事にかわりなく、また、マルセイユ・タロットのシンボルの秘教的な解釈の手引き書としても『秘伝カモワン・タロット』は有効であると思う。

 カモワン、ホドロフスキー両氏の主張するように、現在のカモワン・タロットのような秘教体系をもれなく盛り込んだマルセイユ・タロットの原型があるとは私には思えない。

 例えばコンヴェル版より少し時代を遡ったノストラダムス・タロットの「奇術師」の札はこうだ。

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 更に時代を遡ったジャック・ヴィエヴィルのタロットではこうなる。

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 つまり、私の考えるところでは、マルセイユ・タロットの原型という物があるとして、カモワン、ホドロフスキー両氏の主張のように、その秘教的意味が改悪され、簡略化されたというよりは、遊戯札としてのマルセイユ・タロットがコンヴェル版で一つの完成をみた頃に、クール・ド・ジェブランのエジプト起源説などを受けて、タロットを秘教的な解釈によって取り扱うという風潮が始まった。フィリップ・カモワンが口伝として受け継いできた事は、その過程を経て培われた物であろうと私は考える。

 さて、タロッティストとしての私はカモワン・タロットをどう扱うか……?

 基本的に、ゲストの設問やコンディションによってデッキを使い分けている私としては、カモワン・タロットを唯一の本物のタロットとして扱うなどという事はしない。ただ、人物の視線によってスプレッドを変えて行くカモワン流に魅力を感じる事も確かだ。

 私はタロットはゴールデン・ドーンの秘教体系を基に解釈すると決めているので、ウェイト系はウェイト系として扱い、トート・タロットはトートの扱い方をする。カモワン・タロットを使うとしたらカモワン流にする……それだけの事だ。多分、カモワン・タロットを使う機会はそう無いであろうと思うが……

 では私の使用するタロットの「魔術師」……マルセイユ版では「奇術師」、カモワン・タロットでは「手品師」と呼ばれているカードを幾つか紹介して本稿を終わりたいと思う。

 ユニバーサル・ウェイトの「魔術師」。

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 ピクトリアル・キーの「魔術師」。

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 ハンソン・ロバートの「魔術師」。

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 メディテーションの「魔術師」。

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 トートの「魔導師」。

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 タロットに正解や正統は無い。それが現時点での私のスタンスである。

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 紅王は吉祥寺のギャラリー&占いシコウにて、タロット・リーディングとタロット教室を開いています。

 詳細は下記サイトから。

http://www.shikou5584.co.jp/fortune.html

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