三橋歌織被告被告人質問法廷ライヴ

 一昨日のブログに続き、三橋歌織被告の第10回公判、精神鑑定の鑑定結果を受けての再度の被告人質問について、資料として全公判内容を採録する。

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【法廷ライブ】セレブ妻バラバラ第10回公判(2008年3月12日)【全詳報】

《「責任能力を喪失していたことは十分推認できる」-。三橋歌織被告の犯行時の精神状態の問題点が2人の鑑定人から報告された衝撃の公判から2日。12日の第10回公判は、東京地裁104号法廷で午前9時59分に開廷した》

 《今回の被告人質問は、河本雅也裁判長が「鑑定人尋問を聞き、再び尋ねたいことが出てきた」として急遽(きゅうきょ)開かれることが決まったものだ。裁判所が鑑定結果を全面的に肯定し、「歌織被告は責任能力がない心神喪失状態だった」と認めれば刑事責任は問えず、無罪ということになるが、その判断は重い。裁判長は、鑑定結果の内容を、しっかり吟味したいと考えているのだろう》

 《歌織被告は薄手のピンクのセーターに白いパンツ姿。今回もロングの髪を肩の下まで伸ばしている。髪をかきあげながらゆっくりといすに腰掛けた。まずは裁判長が前回の鑑定について触れる》

 裁判長「2人の鑑定人に対する検察側の質問で、『(2人別々の鑑定ではなく)共同鑑定ではないか』という指摘があった。鑑定人尋問は24日10時に続行されるが、経過をこの場で確認しておきたい。裁判所としては両名に共同鑑定を命じたことはない。それぞれの鑑定人が宣誓し、選任手続きが行われた」

 《裁判長は、検察側・弁護側が推薦した2人の鑑定人が基本資料を共有していたことは把握していたものの、鑑定人自身が共同鑑定と認めるような方法で鑑定を実施したことについては、裁判所としても想定外だったことをあえて指摘した》

 《続いて裁判長は、出産などを理由に第4回公判に証人として出廷しなかった歌織被告の友人の女性に対し、居住地域の裁判所で今月7日に行った、証人尋問の内容について報告する》

 裁判長「○○さん(実名)が大学時代の親しい友人であることを確認し、まず平成17年7月下旬、別の友人とともに恵比寿(東京)のレストランで会ったことについて質問があった」

 「『その場で祐輔さんとの関係は何と言っていたか?』と聞くと、証人は『離婚を考えていて、当然するという話だった』と答えた。歌織被告が証人に『もうがまんできない。お金の面などで条件をつけて離婚しようと思っている』と言ったかどうか聞くと、証人は『そういう風には言っていません』と答えた。『捜査段階でそういう話をしなかったか?』と確認したが、『そういう話はしていなかったと思う』と答えた。調書については『100%納得いくものとしてサインしたものではない』と…」

 《検察側の冒頭陳述には、歌織被告が「経済的に有利な条件で離婚したいという思いを強く抱いていた」としている。その根拠には、この証人の供述調書もあったとみられるが…》

 「検察官が『あなたは(調書の)どの部分が納得いかないのか』と質問すると、証人は『具体的に述べるのは記憶もあいまいで難しいが、全体的に読むと、悪意に満ちた言葉が自分から出たのかとあぜんとした。まったく事実と異なるかというとそうではないかもしれない』と答えた。『ただ、内容は確認して署名しますよね』と問うと、『ハンコを押さなきゃ終わらないというような長時間でしたし、早く帰りたいという気持ちもあって押してしまった』と」

 《淡々と読み上げる裁判長。歌織被告は興味がなさそうに時折目をつぶっていた。歌織被告が祐輔さんの暴力によりシェルターに入った17年6月以降は、証人は祐輔さんから頻繁に直接電話がかかってきたと述べたという》

 裁判長「1回かかってくると1時間ぐらいで、毎日、土日もかかってきた。『何かさせられたか』と弁護人が質問すると、『居場所を探している』などと答えた。(歌織被告が)万引したということも証人は聞かされていた」

《歌織被告の友人の証人尋問について河本雅也裁判長の報告が続く。弁護人が行った尋問部分の報告であるため、歌織被告に有利な証言が多い》

 裁判長「弁護人が『歌織被告から公正証書や慰謝料を取ってやるという話を聞いたことがあるか?』という問うと、証人は『ない』と答えた。また、『(祐輔さんに)マンションを買わせて自分のものにするという話を聞いたことあるか?』という問いにも『ない』と答えた。要旨は以上の通りだ」

 《裁判長は、証人尋問の報告を終えると、「続いて、被告人に質問したい」と傍聴席から見て法廷の右側に座る歌織被告の方を向いた。歌織被告は口元に手をやり、目線を足元にやったまま、ゆっくりと証言台に座った。長い髪をかきあげ、正面の裁判長の方を向く》

 裁判長「一昨日の法廷で両鑑定人が幻覚や幻視についての話をしていたが、これらの話をあなたは被告人質問でしていなかった。まず、幻覚や幻視の話を鑑定人にしたことは間違いないですか?」
 歌織被告「間違いありません」
 裁判長「今まで弁護人などに話したことがありますか?」
 歌織被告「取り調べの段階で、警察官に話したことがあります」
 裁判長「そうしたら?」
 歌織被告「話をすると、『私(歌織被告)の中に罪の意識があったからそう見えるだけだ』『彼(祐輔さん)自身が成仏していなかったから見えたのだ』と言われました」
 裁判長「それは警察から? 検察から?」
 歌織被告「警察からです」
 裁判長「検察からは言われたのか?」
 歌織被告「警察ほどは言われなかったが、検察では、最初から金のことなどを一方的に言われるばかりだった」
 裁判長「弁護人には話したのか?」
 歌織被告「若干話したことはあるが、具体的にはない」
 裁判長「あなたを弁護する弁護人にそういう話をするのは大事なことだと思うが、なぜ話さなかったのか?」
 歌織被告「弁護人がついたのは逮捕されてから1カ月くらいたったころだった。その間、警察からも『ウソだ』『一時的な錯覚だ』と怒られるだけだった。警察で言われたみたいに、自分の弁護人から変なヤツと思われたくなかった」

 《「犯行時は心神喪失状態だった」という鑑定の根拠にもなった幻覚。裁判長は、自身に有利なはずのこの証言をしてこなかった理由を歌織被告にただした》

 裁判長「法廷で弁護人から聞かれたときもその話はありませんでしたね。同じ理由からですか?」
 歌織被告「正直言って、私が間違いなく犯人だから…。申し訳ないが、鑑定のためというか…(鑑定では)私が今まで話しにくかったことを話した。事件の鑑定がどうのこうの、鑑定が大切だという感覚では話していない。(これまでの法廷では)正直言って、話しにくい内容もあったので、話せなかった」
 裁判長「鑑定人は『朦朧(もうろう)状態だった』と言っていたが、祐輔さんの殺害から1カ月近くも朦朧という感覚はあったのですか?」
 歌織被告「朦朧という言葉が私に当てはまっているかはわからない」
 裁判長「その(祐輔さん殺害)後、あなたは園芸用土やブルーシート、ゴミ袋を買ったり、捜索願を出したり、布団マットを実家に送ったり、祐輔さんの父に祐輔さんの名前をかたってメールを送ったりいろいろしている。はっきりとしたことをやっているが、(自分がしたことを)分かっていてやったのか?」
 歌織被告「わかっていました」

 《裁判長は、ここで質問を終えた。弁護人からは特に質問はなく、検察官が『では』と言って立ち上がった。歌織被告は検察官の方に体を向けた》

 検察官「これまでの証言と、鑑定人に話したのと違う内容を確認したい。以前、被告人質問で殺害時の状況を話したよね?」

 《歌織被告は、答えの代わりに、少しだけ顔を上向け、検察官を見やった》

 検察官「『ワインボトルを持ってリビングに行った』と話した。覚えているか?」
 歌織被告「…(うなずく)」
 検察官「『祐輔さんの頭の方に座った。座り方は正座のようだった』と証言した。覚えているか?」
 歌織被告「はい」
 検察官「『その後、両手に持ったワインボトルを肩の辺りから振り下ろした』と話しているが、間違いないか?」
 歌織被告「はい」
 検察官「いつワインボトルを肩の辺りに振り上げたのか?」
 歌織被告「…」

 《沈黙する歌織被告に、裁判長が「わかりにくい質問かもしれないね」と助け舟を出した。検察官は、質問を言い直す》

 検察官「一連の行動の中で、あなたはキッチンからリビングに行く間、ワインボトルを片手に持った? 両手に持った?」
 歌織被告「キッチンからリビング? …鑑定人の先生にも話したが、キッチンの壁によりかかったら、視界にワインボトルが入ってきた。見えたのでそれを取って…どうやって…両手か片手か覚えていない」

 《それまで証言台に行儀良く座っていた歌織被告は、ワインボトルを持ち上げる動作を再現しようとしたのか、左手を上下に動かしながら証言を続けた》

 検察官「どの時点で振り上げたのかも覚えていない?」
 歌織被告「そうですね(覚えていないの意)」
 検察官「キッチンから出て、寝ている祐輔さんの枕元に座ったことは覚えているか?」
 歌織被告「一連の行動自体もよく覚えていない」
 検察官「それも覚えていない? ふーん…」

 《前回の被告人質問では「ワインボトルを持ってリビングの方へ行った。リビングに行って、彼を殴った」と証言していた歌織被告。今回はそれを『覚えていない』と証言する歌織被告に、検察官は疑惑のまなざしを向けた》

 《引き続き検察官の質問が続く。検察官は前回の被告人質問での証言と、鑑定人に歌織被告が話した内容の矛盾点を問い詰める》

 検察官「被告人質問ではキッチンからワインボトルを持って、(リビングで寝ていた)祐輔さんの枕元に座ったと言ったが、これは記憶していたのではないのか?」
 歌織被告「部屋が狭いので(祐輔さんが寝ていた)マットレスを敷くと歩く所が限られるので、それ(キッチンからリビングに移動したという行動)以外あり得ないからそうなんだろうと」
 検察官「鑑定人に対して、キッチンからリビングにワインボトルを持っていたのも片手だったか両手だったか覚えていない、と話したのか?」
 歌織被告「はい」
 検察官「鑑定人はそれに対してどう質問した?」
 歌織被告「覚えていない」
 検察官「鑑定人の話では、あなたがワインボトルを手にした記憶があるが、その後記憶が全くなくなり、気付いたら(祐輔さんの)枕元に座っていたとのことだが、鑑定人に対してそのように話したのか?」
 歌織被告「はい」
 検察官「キッチンからリビングにいったこと自体は覚えているのか?」
 歌織被告「行ったこと自体は覚えている」

 《供述が矛盾する歌織被告。質問の意図を理解させようと裁判長が助け船を出す》

 裁判長「キッチンからリビングにどうやっていったかについては?」
 歌織被告「部屋が狭いので行き方はひとつしかないので行ったのであろうと…」
 検察官「行った記憶は?」
 歌織被告「はっきりとは…。ただ、そうなんだろうと」
 検察官「キッチンからリビングに移動したことについて不思議には思わなかったようだが、鑑定人はその間の記憶が全くなかったと言っているが?」
 歌織被告「不思議だと思わなかった」
 検察官「鑑定人の証言では、『キッチンにいたのに気付いたら、リビングにいた』と受け止められる。なぜキッチンからリビングにいたのかという記憶はなかったのか?」
 歌織被告「全くなかったと言ったのではなく、(凶器となるワインボトルを手にした)あの時にいちばん覚えているのは、キッチンに立つと窓から代々木公園が見えて、真っ暗な絵(光景)は覚えている。が、金先生(検察側請求の金吉晴鑑定人)の説明でいうその間の記憶が全くないというのは、歩いたりどうしたりという行動についてあまり記憶にない(という意味)」
 検察官「金先生から『その間まったく記憶がなかったんだね』と聞かれたか?」
 歌織被告「そこまで覚えていない」

 《細かな記憶や認識について、検察官の質問は続く》

 検察官「被告人質問では、ワインボトルを持ってリビングに行き祐輔さんを殴った時の状況について、『とにかく彼から逃げたい』と言ったがこれでいいか?」
 歌織被告「はい」
 検察官「1発目(に殴った時)の力加減について『わからない』と言っていたが?」
 歌織被告「覚えていない」
 検察官「鑑定人の話では、祐輔さんが寝た後、地響きのような感情が起きあがったというがどういう感情か?」
 歌織被告「感情…? 感情とは違うと思うが、自分でも何か分からないが、地球上の全部のエネルギーがワーッという…感情とは違うような…体中から汗が出てくるし、とにかくワーッという感じ」

 《歌織被告が祐輔さんをワインボトルで殴ったときの記憶や感情について検察官の質問が続く中、午前10時45分に書記官が交代。この際、小さな声でボソボソと話す歌織被告に河本雅也裁判長が声をかけた》

 裁判長「大事なところですから、本心と違うところがあったら正確に答えるように。もう少し前に出て。声が聞き取れません」

 《歌織被告が祐輔さんを殴ったときの心境などについて、再び検察官が質問》

 検察官「祐輔さんを殴ったとき、相当な怒りの中で、エネルギーを込めて…」
 裁判長「ちょっと誤導になるね。『どういう感じで殴ったか?』という質問にして。検察側が勝手に色をつけるのはよくない」
 検察官「祐輔さんとの生活を終わりにしたいという気持ちがあって殴ったということだが、どの程度の力を込めて殴ったの?」
 歌織被告「力加減は覚えていない。ひとつ、ここで言いたいことがあるのですが、(検察は)『頭をめがけて』と言っているが、頭をめがけてというより、(殴ったとき)座れる場所がそこしかなかった。座った場所からたたけるところ(が頭)だった。頭だけをめがけて(殴った)、というわけではありません」
 検察官「(頭が)マットから出ている場所だったというわけ?」
 歌織被告「マットから出ている、というより、手が届いた所」

 《証言台の下で手ぶりを交えながら説明した後、歌織被告は髪をかき上げる》

 検察官「マットから出ているところをめがけて、でいいんだね?」
 歌織被告「出てるところというか…」
 検察官「そこをめがけて、でいいね?」

 《「めがけて」にこだわる検察官に、歌織被告は語気を強めて答える》

 歌織被告「狙ってっていうか…。あのときのことで覚えているのは、(握っていた)ワインボトル自体が重かったこと、私自身の体も重かった。彼に対してというよりも、私がとにかく(ボトルを)下ろしたかったという感じに近い。振り下ろした瞬間のことはよく覚えていない。検察が『めがけて、めがけて、めがけて』と言うが、顔だけを殴った感じではない」
 検察官「(祐輔さんをボトルで)殴ろうと思ったのか、それとも下ろしたら当たっちゃったのか?」
 歌織被告「分からない」
 検察官「分からない?」
 歌織被告「『殴ろう』というより、『面倒くさい、嫌だ』という感じ」
 検察官「それはどういうこと?」
 歌織被告「ぜーんぶが、すべてがもういいやって」
 検察官「ワインボトルで殴ってもいいやってこと?」
 歌織被告「すべて。全部。私の生活状態すべてが面倒くさくて…」
 検察官「分かりにくい。殴ろうと思って殴ったのか?」
 歌織被告「その瞬間のことはよく覚えてない」
 検察官「殴ろうと思って振り下ろした、それとも(ボトルが)重たいから下ろしたのか?」
 歌織被告「そのときの状態ではっきり覚えているのは、『面倒くさい、もう嫌だ』って気持ちだけ」
 検察官「(前回)鑑定人が結果を報告したが、あなたはワインボトルを振り下ろしたときのことについて、鑑定人にどんなことをしゃべった?」
 歌織被告「ワインボトルをおろしたとき、こんな感じ、こんな感覚で、ということを話した」
 検察官「鑑定人は『(歌織被告の)重たい(という感覚)』というのがなければ下ろさなかったと言っていたが、殴るつもりはなかったということですか?」
 歌織被告「明確に『めがけて』っていうのではない」

 《河本裁判長も確認する》

 裁判長「重いから下ろしたの?」
 歌織被告「はい」
 裁判長「(祐輔さんの)頭があることは分かってた?」
 歌織被告「多分、分かっていたと思う」
 裁判長「分かりました」
 検察官「前回の公判の内容をもう少し確認する。ワインボトルが重たいから下ろした、生活が辛いから同じようにボトルを下ろした、と鑑定人の先生に言った?」
 歌織被告「先生に話すときにそこまでまとめて話せなかったので、私のつたない言葉を先生がまとめてくれたと思う」

 《犯行当時の心境について、あいまいな記憶しかないことを説明する歌織被告。答弁にも少し力がこもっているようだった》

 《数十秒間にわたって沈黙した後、検察官が質問を再開した。歌織被告は小さな声でボソボソと話を続けた》

 検察官「前回の被告人質問では、『首から上を狙って殴った』と言ったが、話の内容が違いますよ」
 歌織被告「結果的に(寝ていた)マットから出ている(祐輔さん)の(体)は、私が座っている場所から見えるのは、首しかないのです。それは日常的になっていた。目隠ししても分かるくらいです」
 検察官「狙って殴ったわけではないが、この辺りに頭があるのは分かって、殴ったということか」
 歌織被告「…分からない」
 検察官「どうしてですか?」

 《この質問に対して、歌織被告は突然、声を荒げた》

 歌織被告「さっきも話したけど、私は殴った時を見ていないし! 見ていたかもしれないけど、覚えていません! 関係ないことは覚えているけど、彼の頭を見ていたかというと、見ていなかったし、実際に見ていたのは別のもの。頭を見ていなかったのだから、見ていないものを『狙っていたか』と言われると…」
 検察官「ワインボトルが重かったとか、体が重くて仕方がなかったという話を、刑事や検察官に話したか?」
 歌織被告「警察には話したと思います」
 検察官「弁護士には?」
 歌織被告「話したと思う」
 裁判長「話したのに、前回の被告人質問では話さなかったわけ?」
 歌織被告「話さなかった」
 検察官「そういう話をしようと、(弁護士との)打ち合わせでは話さなかったのか」
 歌織被告「なかった」
 検察官「それを不満には思わなかったのか」
 歌織被告「はい」

 《数十秒の沈黙。検察官が資料やメモをめくりながら、質問を再開した》

 検察官「この話を、鑑定人にはいつしましたか?」
 歌織被告「覚えていません」
 検察官「(鑑定人の)金(吉晴)先生のところで(脳波の)検査をしたと思うが、何回したか?」
 歌織被告「2回です」
 検察官「脳波の検査を基準に考えて、いつ話したか?」
 歌織被告「脳波検査の前です」
 検察官「2回しているが、両方の前か?」
 歌織被告「はい」
 検察官「金先生の話だと、1回目の後ということだが」
 歌織被告「いつですか?」
 検察官「1回目の後だと」
 歌織被告「何月何日?」
 裁判長「2月20日」
 歌織被告「それより前ですね」
 検察官「どれくらい前?」
 歌織被告「1番はじめに金先生に会ったときは、事件前の彼との生活について中心に話しました。2回目に会ったとき、当日のことを話したので、そのときには、もう話していたと思います」

 《ここで、話題は殺害時の状況に戻る》

 検察官「祐輔さんはマットに、後ろを向いて寝ていたか?」
 歌織被告「そう」
 検察官「あなたは(被害者が寝ていた)マットの外側にいたのか?」
 歌織被告「外にいた」
 検察官「どのくらい?」
 歌織被告「分からない」
 検察官「手で示して」
 歌織被告「分からない」
 検察官「さきほど、だいたいこの辺にいたと、示したが」
 歌織被告「分からない」
 検察官「両肘を伸ばして、(ワインボトルを)振り下ろしたか?」
 歌織被告「分からない」
 検察官「曲げて振り下ろしたか?」
 歌織被告「分からない」
 検察官「そのとき被害者の頭から血は出ていたか?」
 歌織被告「出ていた」
 検察官「額か?」
 歌織被告「この辺に」

 《歌織被告が、身ぶりで示す》

 検察官「いま髪をかき上げて額を示したので、分かった。どれくらい」
 歌織被告「どれくらいといわれても」
 検察官「額、全部か?」
 歌織被告「全部ではない。一部でした」
 検察官「うっすらにじんだという感じか?」
 歌織被告「はっきりと血だというのは分かりましたから」
 検察官「話は変わるが、さっき裁判長から幻覚、幻視について確認があったが、被害者を殴ったときのことを確認したい。たくさんのフラッシュが光る中で、さまざまな映像が見えたといいましたね?」
 歌織被告「はい」
 検察官「携帯ストラップのクリーナーが巨大化したものが見えた?」
 歌織被告「はい」

 《祐輔さんを殴っている最中に見ていた幻覚の内容について、検察官と歌織被告とのやりとりが続く。歌織被告は、『携帯ストラップのクリーナーが巨大化したもの』の他にも、幻覚が見えたと供述する》

 検察官「以前、祐輔さんが読んでいた男性雑誌?」
 歌織被告「はい」
 検察官「ずっと会っていなかったおばあちゃん、この3つ?」
 歌織被告「それは11月の二十何日か忘れたけれども、私の両親と祖母が訪ねてくれた。そのときマンションに録画されている映像です」
 検察官「録画されている映像がまた見えた?」
 歌織被告「はい」
 検察官「暗い代々木公園の風景も見えた?」
 歌織被告「はい」

 《ここで検察官は、歌織被告が鑑定人に話した幻覚などの状況を、前回の被告人質問では話さなかった理由についてただしてゆく》

 検察官「裁判官からの質問で、あなたは『鑑定をカウンセリング代わりと思っていた』と言った?」
 歌織被告「はい」
 検察官「大体それが理由ですか?」
 歌織被告「あとは、取り調べで言っても信じてもらえなかったので、言いたくない(から)」
 検察官「それは前回の被告人質問で話さなかった理由?」
 歌織被告「私自身が(犯行を)やったのは間違いないですから、関係ないだろうという感覚しかなかった」
 検察官「被告人質問で言わなかった理由は2つ。言っても信じてもらえないということと、自分が犯人には間違いないから?」
 歌織被告「そうです」
 検察官「どうせ信じてもらえないというのはどうして?」
 歌織被告「なぜ? 申し上げにくいですが、これまでの取り調べの中で、いろいろあったことが一番あります」
 検察官「不当な取り調べについては、被告人質問で語っていましたよね?」
 歌織被告「私が一番わかっていただきたかったのは、鑑定に話した精神的な部分ではなくて、ここに至るまでの彼との生活をわかってほしかったし、取り調べで消された部分をわかってほしかった。それがすべてでしたから。鑑定に話したことまでわかってほしいというのはなかった」
 検察官「結局、検事と刑事に幻視のことはもみ消された?」
 歌織被告「はい」
 検察官「納得がいかなかった?」
 歌織被告「鑑定の先生に話したことをここの法廷で話そうとは思わなかった。何よりわかってほしかったのは、彼と今までどういう生活があったのか、でした」
 検察官「この裁判に当たって、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、責任能力を争っていこうと弁護人と打ち合わせしましたか?」
 歌織被告「しました」
 検察官「責任能力を争うとはどういうことと理解しましたか?」
 歌織被告「理解していません」

 《ここで速記官が交代。歌織被告が髪をかき上げる》

 検察官「責任能力を争う内容として、DV(配偶者間暴力)とPTSDを主張すると知っていた?」
 歌織被告「主張自体は聞いていました」
 検察官「PTSDが精神の病ということまで知っていましたか?」
 歌織被告「そういう病気があるくらいは知っていた」
 検察官「肉体的な病気だと思っていた?」
 歌織被告「精神的な病気だなくらい」
 検察官「精神病があると責任能力が欠けるという理解はありましたか?」
 歌織被告「正直申し上げて、私自身はそういうものに当たると思わなかったので、弁護人がその主張でいくとわかっていたが、認められるとは思っていなかったし、深く考えていませんでした」
 検察官「責任能力がなくなれば、裁判で無罪、刑が軽くなると聞かされていましたか?」
 歌織被告「聞かされたことはないです。刑うんぬんじゃなくて、とにかく調書が事実と違うことばかりだったので、少しでも今まであったことを彼との生活の事実をわかってもらおう。そのための手段として鑑定…」
 検察官「責任が軽くなるという知識は持っていた?」
 歌織被告「ないですが、なんとなく聞いたことはある」

 《ここで再び歌織被告髪をかき上げる》

 検察官「それで幻視、その他、幻覚、幻臭について(鑑定人の)金先生、木村先生に話したのはいつごろだった?」
 歌織被告「とにかく最初は申し訳ないですが、鑑定は形だけ。やってもやらなくても同じ。モルモットみたいに扱われるだけ。『鑑定は受けたくない』と弁護士と話しました。話したってどうせ変に思われるに違いない。少しずつ鑑定の先生と話す中で話せるようになったので、具体的にいつからと言われてもわからない」
 検察官「1回目の脳波検査、2回目の脳波検査を基準にするとどこ?」
 歌織被告「1回目の脳波検査の前です」

 《検察官の質問が続く。歌織被告が見たという幻覚について、細かい質問を重ねていった》

 検察官「祐輔さん殺害の当日、(平成18年)12月12日未明のことだが、あなたと祐輔さんの部屋にクリスマスツリーは飾ってあった?」
 歌織被告「いえ、ありませんでした」
 検察官「12月9日に祐輔さんが飾りをつけたのでは?」
 歌織被告「つけました。サンタクロースの人形を出したり、飾りを出したりした」
 検察官「飾りというのは何?」
 歌織被告「クリスマスカードだったり、ブリキのクリスマスのおもちゃ」
 検察官「それは12月12日未明にも飾ってあった?」
 歌織被告「飾ってあった」

 《検察官が過去にさかのぼって聞いたためか、歌織被告は、当初否定していたクリスマスツリーの存在を認めた》

 検察官「鑑定人の先生に話したあなたが見たという幻視は『変なものを見たか?』という質問に対して答えたのか?」
 歌織被告「いえ、違います」
 検察官「どんな質問?」
 歌織被告「覚えていない」
 検察官「いくつかのあなたの見た映像については、同じ日に話した。それとも何日かまたいだ?」
 歌織被告「話したことをその日だけでなく、違う日に話したこともある」
 検察官「別の日に具体的に詳しく話したということか?」
 歌織被告「そういうこともあります」
 検察官「(クリスマスツリーを含め、歌織被告が見たという)4つの映像についてフラッシュを焚くように次々と浮かんで来ると話したのは最初の鑑定のとき?」
 歌織被告「こういうふうに見えるということですか?」
 検察官「そう」
 歌織被告「話しました」
 検察官「4つの映像を初めて話したときにフラッシュの話をして、別の日にも話したということ?」
 歌織被告「はい」
 検察官「両鑑定人に弁護士を通じて手紙を出したか?」
 歌織被告「一度あります」
 検察官「そこにフラッシュのことを書いた記憶はある?」
 歌織被告「書きました」
 検察官「なぜ、わざわざ手紙に書いたのか?」
 歌織被告「鑑定のときうまく言葉で説明できなかったと思ったので、書いて説明した」
 検察官「1回目の脳波検査で顔面に光を当てられたか?」
 歌織被告「はい」
 検察官「どういう状態だった?」
 歌織被告「目を閉じた状態で光を当てられた」
 検察官「ずっと光っているのか。それとも点滅していた?」
 歌織被告「点滅していた」
 検察官「手紙の中にフラッシュのように映像が次々と浮かんでくるということを書いた覚えはある?」
 歌織被告「はい」
 検察官「脳波検査の光に似ていると書いた覚えはある?」
 歌織被告「はい、ある」

 《検察官の質問に歌織被告は淡々と答える。検察官の質問は、祐輔さんの頭部を遺棄したときの様子に移った》

 検察官「祐輔さんの頭部を町田の公園に埋めたときのことを聞く。なぜ埋めたのかを被告人質問で聞いたとき、身元が分からないようにするということと、周りの人が騒がないようにと言った覚えはあるか?」
 歌織被告「はい」
 検察官「鑑定人に話した内容では、祐輔さんと会話したと言っているね?」
 歌織被告「はい」
 検察官「町田に(祐輔さんの頭部を)埋めたことについて、『自分が決めたのか、祐輔さんが決めたのか分からない』と鑑定人に言っているが?」
 歌織被告「私は最初、頭部を手と同じように近所に捨ててしまおうと思った。でも実際に首を持ったときに『嫌』というふうに言ったとき、彼(祐輔さん)が『そんなこと言ったって、そこら辺に置きっぱなしにはできない』というようなことを話した-と鑑定人に言った」
 検察官「祐輔さんがアドバイスしたということ?」
 歌織被告「『どうしよう、こうしよう』とは言われていないが、とにかく『私は土が大嫌い。土仕事が、土に触るのが嫌』ということを彼とのやりとりで話した」

 《よほど、土が苦手なのか、歌織被告は「土が嫌い」という言葉に力を込めた》

 《殺害後に祐輔さんと会話をしたという歌織被告。その幻聴について、検察官は様子を細かく聞く》

 検察官「鑑定人に話したという祐輔さんとのやりとりだが、声に出して話してはいないよね」
 歌織被告「正直言って自分では分からない。私自身では出していないつもりで話している」
 検察官「(幻聴の中の)祐輔さんとの会話の内容で祐輔さんから『それ(遺体)を捨てたら負け』などと言われたようだが、それはあなたの心の中の葛藤(かっとう)ではないのか?」
 歌織被告「そうだったかも分かりません。ただ、声の感じで、彼がいることは分かっていた。(逮捕後の)2月14日に初めて代々木警察に行ったとき、鏡に映った彼の姿を見た」

 《ここで弁護人の質問に移る。祐輔さんが撮っていたという歌織被告の性的な写真について、なぜ鑑定医の報告まで法廷で明らかにされなかったのか、弁護人が確認する》

 弁護人「弁護人に何を話していたのか確認します。(祐輔さんに撮られていたという性的な)写真について、(最初の)被告人質問前から、(弁護人に)法廷で出した方がいいと言われていましたか?」
 歌織被告「はい」
 弁護人「鑑定人からは出した方がいいと言われた?」
 歌織被告「殺害した日に、なぜ私がICレコーダーまで持ち出して別れたいと思ったのか、その理由を説明するためにも、写真のことを出した方がいいとアドバイスされた」
 弁護人「それで、鑑定人には(法廷で)話していいとなったのか?」
 歌織被告「はい」
 弁護人「被告人質問前に写真のことを(法廷で)出したくないと思った理由は?」
 歌織被告「これまで、事件について、事実と違うことをおもしろおかしく報道されているのは分かっていました。写真のことを出して、事実と違う感じで報道されるのが嫌だったのです。あとは、あのような写真を夫から撮られていたことを知られるのが嫌だった、のもあります」
 弁護人「鑑定人にした話の確認をする。遺体を捨てる際、上半身は袋に入れたまま捨て、下半身は袋から出したということだが、出したのは写真を探すためということなのか?」
 歌織被告「はい」
 弁護人「幻覚のことを警察に話しても、聞いてくれなかった?」
 歌織被告「はい」
 弁護人「弁護人には(幻覚のことを)話したね。何か覚えていることは」
 歌織被告「…」
 弁護側「祐輔さんが見える、血のにおいがするという話をした?」
 歌織被告「しました」
 弁護人「それ以上細かくは話さなかった?」
 歌織被告「はい」
 弁護人「それは(弁護人に話すと)警察や検察官に信用されなくなるからか? でも鑑定人には聞いてもらいたいと?」
 歌織被告「弁護人の先生とは事実関係のやりとりばかりでした。(幻覚のことは)私が話したくなかったのもありますが、(弁護人から)質問されることもありませんでした」

 《弁護人は、鑑定を行った理由について、刑の軽減が目的ではなく、真実を明らかにするためであることを強調する》

 弁護人「鑑定は必要ないと周りに言っていた?」
 歌織被告「はい」
 弁護側「鑑定は刑を軽くするためではなく、殺害に至るまでにどんな生活をしてきたのかを明らかにするためだと弁護人からは言われていた?」
 歌織被告「はい」
 弁護人「私は刑が軽くなるとは言っていないね」
 歌織被告「はい」

 《再び、検察官が質問を始める。鑑定医の意見が認められると、検察側の主張は崩れてしまうだけに、立証には慎重になっている様子だ》

 検察官「今、話で出た写真とは裸の写真のこと?」
 歌織被告「はい」
 検察官「写真はその後どうなった?」
 歌織被告「その後とは?」
 検察側「シェルターから戻った理由が写真(のことをばらすと祐輔さんに言われたから)だったよね」
 歌織被告「はい」
 検察官「その後、写真はどうなったの?」
 歌織被告「返してもらったものは処分しました」
 検察官「ということは全て無くなったということ?」
 歌織被告「そう思っていましたが、(その後)彼から逃げようとしたとき、彼は『まだあるんだ』と言っていた。彼がいないときに部屋で写真を探しました。彼に写真を返してもらわない限り、(2人が住んでいた)あの家には写真がある。逃げたいが、写真を返してもらうまでは家を出られない。探す、見つからないの繰り返し。彼は私の友人の住所も知っていて、私が逃げたら友人に危害を加えると言ってきた」
 検察官「努力したが見つけられなかった?」
 歌織被告「遺体をしまったクローゼットには使わないものを入れていて、(入っていた)ものを出して遺体をしまった。その時に(クローゼットから取り出したものの中から写真を)見つけました」
 検察官「その写真は?」
 歌織被告「見つけた時点で、あのときの部屋にごみ袋がいっぱいあったんで、どれかに入れて捨てた。下半身を一番うしろの、手近にあった袋をつかんでいれたが、写真をどこに捨てたっけと思って、ごみ袋を探したが見つけられなかったので、『下半身の袋にもしかしたら写真があるのか』と思って、心配で心配で」
 検察官「その袋は見たのか?」
 歌織被告「そんなものは見ていない。ヤだと思って」

 《歌織被告は、「ヤだ」と発言したところで、嫌悪感を表すように手を空中で振り払うようなしぐさをした》

 《公判は午後0時を2分回った時点で終了。次回は3月24日午前10時から、2人の鑑定人に対する尋問の続きが行われる予定だ》

(完)

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