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zoom RSS 疎外される演劇のエロス

<<   作成日時 : 2009/03/12 17:04   >>

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 演劇を劇的たらしめる物とは何かといえば、それは極限状況である。極限状況とは何かといえば、それは生老病死という四苦に繋がる物だから、最終的にエロスとリビドー、タナトスとデストルドーに繋がる事を扱わざるを得ないのだ。

 例えば、そうした極限状況を演じられる俳優、エロスやタナトスそのものとして舞台に立つ事が出来る俳優を育てようとするなら、その俳優という人間自身に対して、エロスやタナトスを刺激するという状況に放り込む事でしか、俳優は俳優として大成できない。だから多くの優れた俳優訓練のメソッドとは、人のエロスやタナトスを刺激するように出来ている。

 ところが、乱立する俳優学校の中で、そうした有効なメソッドが、経営的な側面から否定されるという事が、最近、しばしば起こっているようである。具体例として、某俳優養成所の主任講師から聞いた事だが、経営者側から「生徒を叱らないように」というお達しがされたという。なぜならば、叱られた生徒はその養成所を辞めて他へ移ってしまうからだというのである。

 昔は俳優になるという事はとてつもなく狭き門だった。俳優養成をしている学校など、俳優座付属俳優養成所と舞台芸術学院しかないというのが、そも、我が国の俳優養成の現場だった。その後、多くの大手劇団が自前の俳優養成所を構えたが、それでも狭き門である事は変わりなかった。俳優は選抜され、訓練され、更に選抜されるという形でしか俳優になり得なかった。

 それが今や、俳優学校の乱立によって、かつては脱落した人間が、他所の学校に移るという形で俳優養成所を渡り歩くような状況が起きている。学校が過剰なので、一つ一つの学校の平均的なスキルや才能は低下するし、選抜するほどの人数が集まらないから、およそ俳優になる可能性が皆無だという人間も生徒として受け入れねばならなくなる。そして生徒はお客様感覚なので、ちょっとした事でクレーマーになり、あれが気に入らない、これがきついと言っては学校を辞める。

 そうした生徒を引き留める為に、カリキュラムは甘くなり、エロスとタナトスの極限に生徒を追い込むような授業は経営側から禁じ手とされる。かくして俳優の平均的なスキルと自覚はどんどん下がっていき、お芝居ごっこのような芝居しかやらない小劇団を無数に世界に作り出していく。

 今や演劇のエロスを疎外している物の正体は日明かであろうと思う。それは経済であり貨幣制度だ。簡単に言えば金である。結局、生徒は手っ取り早いデビューの出来る学校を選び、簡単に言えば金でコネを買うのである。

 貨幣制度によって日本の演劇の底辺は、とてつもなくつまらない物に変わってしまった。だが、そこら辺の養成所の生徒達よりも学生劇団の方が遙かに良い仕事をしているという現状に最近気付いた。考えてみればそれは当たり前なのだ。学生劇団の俳優達は、金でコネを買ったお客さんではない。無償で演劇を追求する求道者だからだ。これでははなから勝負は見えている。

 心しておくが良い。コネは金で買えても、純粋なモチベーションは金では買えないのだ。コネを金で買えばエロスは疎外される。それはとてつもなく不幸な事なのだ。

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