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zoom RSS 【人殺しの作り方】〜【参考文献一覧】 『我が名はレギオン』公開創作メモ−11

<<   作成日時 : 2007/12/18 17:38   >>

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 『我が名はレギオン』の公開創作メモは、ここまでで第一部を完結とする。というか、これ以降は、芝居の本当の中身に関わる事なので、暫くは公開を控える事になる。ひょっとすると公開はここまでになるかも知れない。最後に、考察にあたって使った参考文献とイメージトレーニングに使った映画を列記しておく。

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【人殺しの作り方】

 これまで様々な殺人事件と殺人者を検証してきたが、それでは、殺人者とは何であるか、いかにして人は殺人者になるのかという事を普遍化できるだろうか? おそらく、全ての殺人者について共通点を発見するという事は不可能だ。人を殺すという事は、ある種の倫理の規範や制約を突破する事で、それには強力な動機が存在する場合もあり、単なる愚行である場合もあり、精神障害や人格障害に起因する事もある。人が殺人にいたる経緯や動機は、それこそ殺人者それぞれに特殊な背景があって、一概にこういう人物が殺人者になるという断定は出来ない。だが、印象的な殺人者の履歴から、「人は人を殺してはならない」という規範が破壊されてしまう原因や、殺人者が自暴自棄になってしまう要因を洗い出す事はある程度は可能だろう。

 そこに浮揚する魂がある。彼、或いは彼らを次作のタイトルに従ってLEGION(レギオン)と呼ぼう。LEGIONの魂が何処に浮揚していくか、彼はいかにして殺人者の一人であるLEGIONとなったのか……LEGIONの魂と共に、デストルドーの海に漂ってみようと思う。


《破壊されたLEGION「家族」のような物》

 LEGIONは正常な家族関係の中にいない。父は父ではなく、母は母ではない。宮ア勤の両親がそうであったように、それは「父の人」であったり、「母の人」であったりする。兄弟がいても彼は「お兄ちゃん」ではない。武藤亜澄が武藤勇貴を「お兄ちゃん」ではなく「勇君」と呼んだように、彼も家族からは名前、もしくは愛称で呼ばれる。彼の家族に対する呼び方も同様。

 舞台には家族の食卓がある。だが、椅子の数は家族の人数よりも少ない。宮ア勤の家がそうだったように、五人家族なのに椅子は三つしかない、七人家族なのに一度に座れる人数が四人までしかない、など……そして家族はその事によって不自由していない。全員が集まらない事、それが当然になっている。

 LEGIONの家庭には「父権」が欠落している。多くの場合、父親は家庭に不在であるか、或いは家庭の主導権を母親が握っている。父親は、滅多に家には帰ってこられない職業に就いており、家の所有権のような物は母系相続のような形であるなど、母親の立場が強い。母親の躾は厳しく体罰を伴う。父親の不在はLEGIONに成人男性としての成熟モデルを与えない。LEGIONの♂としてのセクシャリティーは大きく歪みを抱える事になる。

 家の中心は「母の人」である。「母の人」は食卓の中央にいつも坐っている。そこが彼女の指定席である。LEGIONは時に兄妹と、或いは父親を交えて、いつも別の場所に坐る。

 LEGIONには妹がいる。そして兄か姉がいる。兄か姉は既に社会人である。妹は短大に在学している。LEGIONは予備校に通っている。


《LEGIONは深い孤独と挫折の中にあって、そして虚無となる》

 LEGIONの魂は空白である。彼には「彼自身」という者がない。

 彼のセルフ・アイデンティティー、或いは自尊心のような物は、何かの挫折によって吹き飛んでしまったか、それとも最初からそんな物は存在しておらず、改めて「自分は無だ」という事に気づいたかも知れない。いずれにしても彼は自身そのものが空洞であり、カラッポだ。

 彼には彼という物がないから、彼自身、他者と関わる事が出来ない。他者と関わる事の出来る自己が不在だからだ。彼は他者からも、そして自分自身からも孤独である。そして孤独を感ずる彼自身も既に不在なので、彼が孤独を自覚する事もない。

 彼は空洞である。この空洞にはありとあらゆる物が入る込む可能性がある。正義感、憎悪……だが、おそらく、彼は空洞であるという事そのもの、空虚や虚無そのものによって殺意を発動させるだろう。

 彼には自分の命が大事ではない。彼には未来がないからだ。だから他者の命も大事ではない。他者の未来に希望も共感も出来ないからだ。

 彼の空洞にはLEGIONが入り込む。そして彼自身がLEGIONとなる。

「イエスの船より上がり給う時、穢れし霊に憑かれたる人、墓より出でて直ちに遇う。この人、墓を住処(すみか)とす、鎖にてすら今は誰も繋ぎ得ず。彼はしばしば足枷と鎖にて繋がれたれど、鎖をちぎり、足枷をくだきたり、誰も之を制する力なかりしなり。夜も昼も、絶えず墓あるいは山にて叫び、己が身を石にて傷つけいたり。かれ遙かにイエスを見て、走りきたり、御前(みまえ)に平伏し、大声に叫びて言う。
『いと高き神の子イエスよ、我は汝と何の関わりあらん、神によりて願う、我を苦しめ給うな』
これはイエス
『穢れし霊よ、この人より出て行け』
と言い給いしに因るなり。イエスまた
『汝の名は何か』
と問い給えば
『我が名はレギオン、我ら多きが故なり』
と答え、また己らを此の地の外に追いやり給わざらんことを切に求む。彼処(かしこ)の山辺に豚の大いなる群、食しいたり。悪鬼どもイエスに求めて言う
『我らを遣わして豚に入らしめ給え』
イエス許し給う。穢れし霊いでて、豚に入りたれば、二千匹ばかりの群、海に向かいて崖を駆け下り、海に溺れたり」

マルコ傳福音書 第五章 第弐節〜第拾参節





 以上をもって『我が名はレギオン』秘法典(上)とする。

 ロジックの時間は終わった。

 以後、霊感に身を委ねて、劇構造と人物を構築する。

 以後の『秘法典』はWeb上には非公開とする。





【参考文献一覧】

『現代殺人論』作田章・著(PHP新書)
『人はいつから「殺人者」になるのか』佐木隆三・著(青春出版)
『悪魔のささやき』加賀乙彦・著(集英社新書)
『犯罪心理学入門』福島章・著(中公新書)
『犯罪精神医学入門 人はなぜ人を殺せるのか』福島章・著(中公新書)
『殺人という病 人格障害・脳・鑑定』 福島章・著(金剛出版)
『なぜ、バラバラ殺人は事件は起きるのか?』作田明・監修(辰巳出版)
『FBI心理分析官』ロバート・K・レスラー&トム・シャットマン・著/相原真理子・訳(早川書房)
『FBI心理分析官2』ロバート・K・レスラー&トム・シャットマン・著/田中一江・訳(早川書房)
『連続殺人の心理』コリン・ウイルソン&ドナルド・シャーマン・著/中村保男・訳(河出書房新社)
『犯罪学入門 殺人・賄賂・非行』鮎川潤・著(講談社)
『ブロードモア精神病棟−精神医療は犯罪者を治療できるか?』デビッド・コーエン・著/兵藤紀久夫・訳(海燕書房)
『狂気と犯罪 なぜ日本は世界一の精神病国家になったのか』芹沢一也・著(講談社)
『ホラーハウス社会 法を犯した「少年」と「異常者」たち』芹沢一也・著(講談社)
『地獄の季節』高山文彦・著(新潮社)
『「少年A」14歳の肖像』高山文彦・著(新潮社)
『少年A 矯正2500日全記録』草薙厚子・著(文春文庫)
『宮ア勤事件 塗りつぶされたシナリオ』一橋文哉・著(新潮社)
『夢のなか 連続幼女殺害事件被告の告白』宮ア勤・著(創出版)
『夢のなか、いまも 連続幼女殺害事件元被告の告白』宮ア勤・著(創出版)
『Mの世代 ぼくらとミヤザキ君』大塚英志・中森明夫・他著(太田出版)
『〈宮ア勤〉を探して』芹沢俊介・著(雲母書房)
『19歳 一家四人惨殺犯の告白』永瀬隼介・著(角川文庫)
『死と生きる 獄中哲学対話』池田晶子・陸田真志・著(新潮社)
『池袋通り魔との往復書簡』青沼陽一郎・著(小学館文庫)
『死刑囚の記録』加賀乙彦・著(中公新書)
『死刑執行の現場から 元看守長の苦悩と死刑存続の可否』戸谷喜一・著(恒友出版)
『死刑はこうして執行される』村野薫・著(講談社)
『元刑務官が明かす 死刑のすべて』坂本敏夫・著(文春文庫)
『死刑の遺伝子』島田荘司・錦織淳・著(南雲堂)
『死刑執行人の苦悩』大塚公子・著(角川文庫)
『死刑囚の最後の瞬間』大塚公子・著(角川文庫)
『57人の死刑囚』大塚公子・著(角川文庫)
『少女はなぜ逃げなかったか』碓井真史・著(小学館)
『再会の日々 犯罪被害者の親として』曳地正美・曳地豊子・著(本の森)
『子どもが壊れる家』草薙厚子・著(文春新書)
『僕はパパを殺すことに決めた』草薙厚子・著(講談社)
『癒しと和解への旅 犯罪被害者と死刑囚の家族達』坂上香・著(岩波書店)
『無知の涙』永山則夫・著(河出文庫)
『警察の表と裏99の謎』北芝健・著(二見書房)

『イン ザ・ミソスープ』村上龍・著(読売新聞社)
『14 fourteen』桜井亜美・著(幻冬舎)
『CURE[キュア]』黒沢清・著(徳間文庫)   
『レッド・ドラゴン(決定版)』トマス・ハリス・著/小倉多加志・訳(早川文庫)
『羊たちの沈黙』トマス・ハリス・著/菊池光・訳(新潮文庫)
『ハンニバル』トマス・ハリス・著/高見浩・訳(新潮文庫)
『ハンニバル・ライジング』トマス・ハリス・著/高見浩・訳(新潮文庫)


【参考映画一覧】

『CURE』黒沢清監督
『叫』黒沢清監督
『LOVE & POP』庵野秀明監督
『くりいむレモン/プールサイドの亜美』廣田幹夫監督
『サイコ』アルフレッド・ヒッチコック監督
『サイコ2』リチャード・フランクリン監督
『サイコ3』アンソニー・パーキンス監督
『サイコ4』ミック・ギャリス監督
『刑事グラハム/凍りついた欲望』マイケル・マン監督
『羊たちの沈黙』ジョナサン・デミ監督
『ハンニバル』リドリー・スコット監督
『レッド・ドラゴン』ブレット・ラトナー監督
『ハンニバル・ライジング』ピーター・ウェーバー監督
『セブン』デビッド・フィンチャー監督
『ゾディアック』デビッド・フィンチャー監督
『ブレイブ ワン』ニール・ジョーダン監督

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