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zoom RSS 【殺人者精神病とプロファイリング】 『我が名はレギオン』公開創作メモ−2

<<   作成日時 : 2007/11/14 23:17   >>

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 次回作、 『我が名はレギオン』の公開創作メモの第二回。今回は、精神科医、福島章の唱える「殺人者精神病」の概念と、ロバート・K・レスラーがプロファイリングの研究対象とした連続殺人犯達に共通する、殺人者を生み出す背景についてである。

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【殺人者精神病とプロファイリング】

 『我が名はレギオン』で描かれる殺人とは、金品目当ての「利欲殺人」でも、他の犯罪を隠すための「隠蔽犯罪」でもない。それは人間関係の葛藤に根ざす「葛藤殺人」であり、殺す事そのものにに何らかの価値と快感を見いだす「快楽殺人」でもあり、その行動を確信的にしている「確信殺人」の要素も含む、その混合型を考えている。つまり、作中の「彼」は、葛藤から殺意を持つに至り、最初の殺人で何らかの高揚感を味わい、以後、確信的に殺人を繰り返していく、そういう人物を想定している。

 葛藤殺人、快楽殺人という事を想定すると、まず、その対象の一つとして、「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」の宮ア勤の事を無視できなくなる。宮ア勤の犯罪については、後に詳細に考察したいと考えるが、ひとまず、宮ア勤の精神鑑定について、「人格障害」、「統合失調症」、「多重人格」という三者三様の鑑定結果が出たという事に対して注目してみたいと思う。この鑑定結果は、精神医学という物に対する世間の信用を失墜させたと言えるし、それ以後、世間は殺人犯に対する精神鑑定という物に対して、批判的な色眼鏡をつけて考えるようになった。この三つの鑑定は、やはり精神科医の香山リカによれば、テーブルの上のリンゴに対して、「これは果物だ」、「CG作品である」、「宇宙人が化けている」と表現するのに等しい程にかけ離れた見解であるとの事だ。

 ここに、福島章の提唱する、「殺人者精神病」という新しい医学的概念がある。精神医として、数々の犯罪者の精神鑑定に関わってきた福島は、同じ殺人犯に対して、異なった鑑定医が異なる鑑定結果を出すという事に着目し、また、殺人を犯すような犯罪者は、外来で精神科や心療内科を訪れる患者の臨床例とは全く別の精神構造を持っているという事に対して研究を進めた結果、殺人者の多くがある種の脳の構造的な異常を持っている事に注目した。そこで、一般の精神疾患の罹患者や人格障害者とは別に、「殺人者精神病」という特別なグループがカテゴライズされるのだという結論を導き出した。つまり、宮ア勤などに関して云えば、「殺人者精神病」のある一面が「人格障害」の症状を示し、また「統合失調症」の症状を見せたり、「多重人格」の症状を見せたりする、それらは同じ「殺人者精神病」という疾患の別の角度から観た側面なのだという事である。

 福島の唱える「殺人者精神病」には、『殺人という病』(金剛出版)によれば、おおよそ次のアウトラインがある。

1)多くの重大殺人者の人格構造は境界例人格構造以下のレベルにある。
2)殺人者の生活史には2亜型がある。
3)殺人者の多くは、脳の異常所見を伴う。
4)殺人者の多くは自殺願望を抱く。
5)殺人者の多くは、幼児期から外傷的な体験に曝されている。

 だいたい、以上の五つである。このうち、「2)殺人者の生活史には2亜型がある」という部分は些か分かりにくいが、かいつまんで云えば、明らかに分かる反社会的なパーソナリティー障害を示している例と、一寸した変わり者程度にしか見えない、軽度の人格障害を有する物の二種が認められるという事だ。もう少し砕いた言い方をしている、一般読者向けの同氏の著作、『犯罪者精神医学入門』から引用してみる。

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 「人はなぜ人を殺すのか?」という問いに、最後に簡潔に答えることにしよう。
 典型的な殺人者の多くは、
1)脳に微細な点で健常人とは違った変異(MiBOVa)を持って生まれ、かつ/または、
2)少時に過酷な虐待、心的外傷を受けて育つ。
 いずれにせよ、彼らは、
3)平均的な人とはかなり違った性格を持ち、場面によっては低水準の自我の防衛機能を働かせ、
4)多彩だが非定型的な《精神症状》を示しつつ生きることも多い。
 さらに、その彼らが環境との間に深刻な葛藤や不適応を生じると、
5)時には強い《自殺願望》を抱くこともあるものの、
自らの死を果たす代わりに/または自らの死を招くために、
6)人を死に至らしめる、
と考えられる。

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 私は、福島章が「殺人者精神病」の根拠としている、先天的な脳の異常所見や変異については良く分からない。医師として、福島がそれらのデータを集めたと云うことであれば、それは一つの客観的な事実として考える材料にしなければならないと思う。ただ、殺人に至らない、全ての犯罪について考えると、例えば「窃盗者精神病」とか、「性犯罪者精神病」という物があるのだろうかと考える。政治家や官僚や、大手企業の重役の横領や不正や隠蔽体質にも脳の変異に原因があったり、特定の精神疾患の概念を押し広げることが出来るかどうかも分からない。

 ただ、脳の構造的な異常のあるなしに関わらず、幼少時からの過酷な生活環境、虐待経験などの心的外傷の積み重ねが、殺人者と環境との葛藤を引き起こすという事は確かな要素の一つであろうと思われる。私が関心を持った殺人事件の犯人の多くは、いずれも不幸な生活史を持っており、徐々に殺人者となるべく「作られて」行ったという印象を拭い得ない。また、国際的なプロファイリングの第一人者であるロバート・K・レスラーは、『FBI心理分析官』の中で、彼が「怪物」と呼び、プロファイリングの対象とした連続殺人犯について、例えば35歳まで、ごく普通の人間として生きてきた人が突然凶悪な連続殺人犯になるという事はあり得ない、彼らは幼少期からの必然によって「怪物」に育てられたのだと語っている。つまり、どのように育ってきたかという背景が、殺人者が殺人に至る原因の重要な要素をなしているという事は見逃せない事実なのである。

 ロバート・K・レスラーがプロファイリングの対象とした連続殺人犯達、いわゆる「怪物」と呼ばれた快楽殺人を繰り返した殺人犯達は、概ね、白人男性、中流以上の経済基盤を持って両親の揃った家庭で育っており、知能も平均以上であるという。一見、恵まれた環境に育っていたかのような犯人達なのだが、突っ込んで調査すると、家族の中に犯罪者や精神異常者、アルコール依存症の患者などがおり、両親も離婚と再婚を繰り返していて、家庭は崩壊状態にある事が多いという。米国の白人男性が連続殺人者になる可能性が高いのは、離婚率と再婚率の高さが関連していると日本の犯罪心理学者も指摘している。再婚によって、義理の父親や母親、義理の兄弟から性的虐待を受ける機会が増加し、例えば、父親がアルコール依存症であるために、家族内の主導権を父親ではなく母親が握っていたり、父親の不在や父性のモデルとなる男性の年長者が身近にいないために、男性としての人格形成のモデルを見いだすことが出来ずに、倒錯した性的志向を持つに至るなどと云う背景がある。

 殺人者達の生活史において、親から受けた暴力や虐待は重要な意味を持つ。虐待や暴力の体験は、彼らが成長するにつれ、やがて自分を虐待した加害者と自分を重ね合わせ、別の犠牲者に対して、立場を変えて復讐の対象としてしまうのだ。酒鬼薔薇聖斗以後、殺人事件を引き起こした少年達が、学校現場ではいじめっ子ではなくていじめられる側にいた事の例の方が多いと云うことは注目に値する。彼らは悪意に蝕まれながら、いつか自分が最大の悪意の行使者になってしまうのだ。

 同時に、『現代殺人論』の著者である、やはり精神医の作田明は、誰もが殺人の加害者になる可能性を持っているのだと指摘している。「あんな奴、いなくなってしまえば良いのに」という排除の感情は、容易に殺意に転化するのだと作田は云う。いなくなって欲しい、事故にでも遭って死んでしまえばいいのに、という空想が、偶然死なないのなら自分の手で殺してしまおうという殺意に発展するまでには、ほんの些細なきっかけがあればいいのだとも云う。作田は福島の「殺人者精神病」の概念の支持者ではあるが、殺人者を特別な人間として区別していない。

 殺人者となるべく育ってきた訳ではないのに、葛藤の末に殺人に及んでしまうという事は無くはないだろうと私も思う。息子の家庭内暴力に耐えかねて、父親が息子を絞殺してしまった「開成高校生絞殺事件」などはその一例だろう。ただ、この父親の場合、息子を殺して自分も死のう、と考えていたが死にきれずに自首に至った訳であるから、福島の指摘する、殺人者の自殺願望という項目には一致するかも知れない。つまり、この父親は心中を図って果たせなかったのだ。「心中」という概念は、日本文化の外に出ると理解されることは難しい。これはドイツ語圏などでは「拡大自殺」という表現がされるし、英語圏ではむしろ「自殺を伴う殺人」と認識されている。

 何にせよ、快楽殺人者の背景は長い年月をかけて育まれ、葛藤殺人者は、その環境と人間関係が、殺意とその発動としての殺人の実行へと追い詰められていく。次に、印象的な殺人者について、その生い立ち、横顔などを個別に検証してみたい。

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