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zoom RSS 劇団の必然と劇団の成立要件−其之壱

<<   作成日時 : 2007/08/16 23:28   >>

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 公式ホームページを少しだけ直した。所属メンバーの紹介ページと全キャスト・スタッフ名鑑を最新の物に直す。
 本当は、そこに至った状況とか、それによって体制をどう変えていくかという事について書かねばならなかったし、本当は一年以上前にそれは公式声明をしてしかるべき物だったのだが、色々と不愉快な事が重なり、公にする事が出来なかった。正直に言えば、その件について、もう一年以上落ち込みっぱなしだった事になる。

 公式声明を出す前にこういうところで書くのもおかしな話したけれども、現在、演劇実験室∴紅王国は劇団として機能していない。内々の解散提案などは一昨年の末あたりからしていて、その時すでに、劇団としての機能は失われつつあった。紅王国の機能不全は2003年の末頃からジワジワと進行していて、昨年の春にはもうどうにもならない状態になっていた。結果として、劇団の構成員としては、辞めたいと人間を引き留めずに、辞めさせたい奴を首にしたら、実動メンバーとしては私と鰍沢ゆきだけという状況になった訳だ。

 紅王国を立ち上げた頃は、まだ「劇団」という体制はとらなかったし、私は「劇団というシステム」を嫌っていたので、あえて劇団とは名乗らなかった。今までも自分の演劇集団に「劇団」という枕詞をつけた事は一度もない。だから紅王国は劇団紅王国なのではなくて演劇実験室∴紅王国なのであり、おそらく、これからもそのようにあり続ける。ただ、立ち上げた頃には、私のテアトロ新人戯曲賞の受賞という事で弾みが付いていて、このままみんなで突っ走ってやろうという勢いがあった。

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 劇団を立ち上げるという時は、よそでは出来ない、独自の方法論を共有し、継続していこうという目的が複数の表現者の間で合意が成立した時に生まれ出ずる物だと思う。演劇実験室∴紅王国は、おそらく、よその劇団がおっかながって手を出さないような、独特の幻想劇を成立させる為にどうするかという目標に、少なくともその全盛期には向かっていたはずだった。私はよその劇団に書き下ろしをする時には諸々の禁じ手を設定して、特別な訓練をしていない俳優を、特殊なスキルを持っていない演出家が手がけても、とにかく何とかなるように書いてきたし、逆に、紅王国での上演を前提にした作品については、その都度、新しい何かを導入するという野心を持つ事が出来た。それはとても幸福な時間ではあったのだ。

 紅王国の劇団化という流れは、もう私一人では経済的にも時間的にも、諸々の雑務をこなすのが不可能であるという状況になって徐々に意識化されてきた物だ。分担の流れと劇集団としての二度目のピークが来た頃はほぼ一致していた。2002年の初頭に上演した『御蚕様』の頃がそれである。あの頃は書く事が楽しく、また演出する事も楽しかった。

 その後、新人を何人か迎え入れ、組織が組織として分担化されていく間に、本来は排除されるべきヒエラルキーや官僚化が生じ始めた。ヒエラルキーの形成は非常に不幸な形で進行していったし、同時に、創作者としての私に不可欠なエロスが劇団内部の人間関係によって疎外されていくという最大の不幸が生じ始めた。そして私自身も同じであると思っていた紅王国の中に、私の知らない密室が作られていった。私は紅王国の為の新作を書く事が苦痛になっていったし、肝心の当事者にはその事が全く自覚されていなかった。なんとかしようとし始めた頃には、もう諸々の事が手遅れになっていった。

 六月末に脱稿した『六四五・ASUKA』では、久しぶりに、紅王国での上演を前提とせずに、また、どんな劇団に対してでもなく、上演の当てもなく書き上げた。書くと云う事が久々に楽しかったのは事実だが、同時に、上演に向かってテンションを高めていくという事でもなかった事に、今までにない虚無感も感じた。そして、紅王国に残った僕らにとっては、『六四五・ASUKA』は、紅王国で上演する演目ではないという事も合意された。今ではこの本は、復活する為の通過点に過ぎないと思うようになった。

 おそらく、これは演劇実験室∴紅王国でなければ上演できないという戯曲を書きたくなった時に、演劇実験室∴紅王国は新たな形で新生するという事になるだろう。だがもう同じ轍は踏みたくない物である。坪内逍遙の文芸協会の時代から、劇団の解散の原因は金か女であると云われていたけれども、その事には再三の注意を払わなければならない。そんな事は、もうとっくに学習済みの大人とやっていると油断した私が悪かったのだ。

 学生の頃、亡くなったある演出家に「一度できた事は必ずもう一度出来る」と云われた事がある。困難はあるだろうし、98年旗揚げ以上の勢いとエネルギーが必要となるだろうが、方法論を共有する劇集団が、また私には必要になるだろうし、それは取り戻さなければならない物なのだ。幸福な時は確実にあったのである。

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